笠原日南子。高校一年生。

性格は暗くて、自分でいうのもなんだけど卑屈でネガティブ。

当然あんまり友達もいない。

それは昔からの性格で、いつも学校は息苦しくて嫌いだった。

友達がいなく、人とうまくしゃべれない私には、居場所がないのだ。


……でも

今は少しだけ違う。



**

学校についたのは、チャイムが鳴るギリギリ。

始業前の教室は雑談の声で、がやがやと騒がしい。

うるさいなあ、と内心毒気づきながら自分の席へと向かう。

…私にはこうして雑談できる相手がいないので、嫉妬しているのかもしれない。


「……っ、」
「きゃ……」


席に向かう途中、後ろからクラスメイトにぶつかられた。

相手の腕が軽く当たった程度なので痛くはないけれど、少し驚く。


「……ごめん!大丈夫?笠原さん」


かけられたのは、やや大きめの声。

ぶつかってきた相手……クラスメイトの冬室(ふゆむろ)くんは、すまなそうに顔を歪めた。


「……あ。き、気にしないで……私こそボーッとしてたから……」

「え?」


冬室くんが、左耳をこちらに向けるようにして聞き返す。


(……あ、しまった) 
 

上手く聞こえなかったみたいだ。


「気にしないでっ、私こそごめんね……っ!」


少し声を張り上げるように言うと届いたようで、冬室くんは『わかった』と深くうなずいた。

にこりと、優しく微笑む。