「今日、進路調査の紙提出だからなぁー!」



朝の ホームルームの最後に、高田先生がそう言った。

高田先生っていうのは私達のクラスの担任なんだ。


口は悪いけど、とっても優しい。


……って、あれ?



進路調査?



あ、





そういえば、私はもう中3だった…。



あっという間に月日は流れてくのね……。



私はがっくりと机につっぷした。



まだ、夏前だし、平気だと思ってた。



でも、やっぱりだいたいは決めとかないとよね……。



「何してんの?早くしないと時間なくなっちゃうよ?」



そうやって私の頭をぽんっと軽く叩いたのは美穂だ。



「あ、次移動だっけ」


私はゆっくりと顔をあげると、机から教科書を取り出した。


1限は、理科だ。


「もーっ、早く!」



美穂がそう言って、私を急かす。



「ごめんごめん」



軽く謝りながら座っていた椅子から立ち上がった。


「お待たせ、行こ行こ!」


「うん!」



そうやって私達は教室を後にして、理科室へ向かう。


「里奈ってば、絶対進路調査のあの紙の存在忘れてたでしょ?」



「えっ!なんで分かったの?」



「なんとなく?里奈は分かりやすいね」


そうかなあ?


私、すぐ顔にでるかな?



思わず顔をしかめる私。



「里奈、決まったの?進路とか」


「ううん、なーんも」



私はそう言って、ぶんぶんと首を振った。


「そか、里奈のことだからそうだと思ってたけどそろそろ真剣に、ね?」


うう、美穂の真面目な顔。


私はまだみんなと遊んでいたいよ〜〜っ!


「美穂は決まってるの?」






「あれ?前言わなかったっけ?……翠高に行きたいって」



そ、そういえば憧れの先輩がどーのこーのって言ってたっけ……。



「あはは、そうだったね」


そんな会話をしているうちに、もう理科室の前。



ドアが開いてるから、声が凄く聞こえてくる。


「でも、私は美穂と一緒の高校、行きたいな」



な、なんですと⁈


ポソリと呟かれた言葉に、私は思わず勢いよく美穂をみる。


「うんうん、私も! 美穂と同じ高校行きたいよ!ってか、みんなと一緒の高校に行きたいよーっ!」


「ちょっ里奈!声でか!少し押さえてよ!」


慌てて、美穂が私にしーっというジェスチャーをした。



そんなに声でかくしたつもりはなかったんだけど……。



「ったく、何騒いでんだよ?」



呆れる様にして、大輝がやってきた。


「大輝からも言ってやってよ。里奈ってばまだ進路決めてないんだって」


ため息まじりに美穂がいうと、大輝がフン、と鼻を鳴らした。


「おい、まだ決めてねーのかよ?もう受験生だぞ」



う、うるさいな!


まだまだこれからだもん!



「だ、大輝はどこにすんのよ?」



「ん、俺はねー」



ドキドキ……。



大輝はどこにするんだろ?



それはすっごく気になる。


キーンコーン


こ、こんな時に!


「はい、みんな席ついてー」


タイミング最悪!


みんな、次々と席に着いて行く。



はあ、また後で聞くかぁー……。



私のモチベーションはだだ下がり。



もう、早く授業おわんないかな。