初恋マニュアル




「なにしてんの?2人とも」



「なにかあった?大丈夫?」



うしろから、羽生くんのからかうような声と、三浦くんの心配するような声。



「ちょっと!美羽、苦しい!助けてぇ!羽生ー!」



「須藤がなんかしたんだろ?丸山、もっとやっちゃえー!」



「はぁ?むかつくー」



いつもこうやって憎まれ口をたたきあう2人が、この先うまくいくといいなと思う。


羽生くんも私といる時よりも愛里といる時の方が、素を出してるような気がした。



「そろそろはなしてあげたら?」



クスクスと笑いながら、私たちのやりとりを見ていた三浦くんにそう言われて、仕方なく愛里を解放すると、すぐさま愛里が羽生くんを追いかけた。



「こらまて!羽生ー!」



「うわぁぁぁ、助けてぇぇぇ!」



おおげさにそう言って、坂道をくだっていくふたりをながめながら、私と三浦くんは顔を見合わせて吹き出した。


ずっと欲しかった恋のマニュアルはきっとそれぞれにあって、私には私の、愛里には愛里の、つむがれていく物語がある。


それは自分で作っていくものなんだって、恋をしてみてはじめてわかった。


恋を知らなかったあのころに思っていたものとは全然ちがったけれど、辛いことも悲しいこともすべてがよろこびに変わる瞬間があるんだってことも知った。


きっとこれからもいろんな物語が私の初恋マニュアルに書き加えられていくんだろう。


それが楽しみに思えてることが、少しだけ成長した証拠なのかもしれないと、隣にいる大好きな人の横顔を見上げながらそんな自分をうれしく思った。


end