「ねぇ。大悟先生。
 のんちゃん彼女いたんだねぇ。」

 お昼休みの中庭。
 たまたまいた大悟先生に絡む。

 高校生が手に負えないというより、相手がいたんじゃどうしようもないじゃない。

「何?のんちゃんが好きって認めるわけ?」

 大悟先生が楽しそうに質問してくるのがムカつく。
 ムスッとしていると大悟先生が試すように質問してきた。

「千尋ちゃんなら案外…。
 どうする?のんちゃんが実は彼女に捨てられてましたってなってんだったら。」

「え?」

 どういう…。

「怪我をして選手として戻れるかどうかの時に、速攻で別の男へ乗り換えられてたら。」

 それは…。
 喜ぶのは違うと思う。
 だって、もしそうなら…。

 そのせいで今みたいに昔を思い出すような言葉を言われるだけで気を失うようになったとしたら。

「………私にはかなわないよ。」

「うん。正しい判断だね。」

 大悟先生が優しく頭を撫でてくれて、大悟先生のこと大嫌いだと思っていたのに、不覚にも泣いてしまった。

 のんちゃんのことが好きだって気づいたからじゃない。

 気を失うまでののんちゃんの気持ちが…私には救うことができないんだって分かったから。