結局、のんちゃんが顔を出したのは最初だけ。
 教えてくれるわけでもない。

 騙された気分。

「ねぇ。さっきのって澤村選手でしょ?」

「やっぱりそうだよね。
 なんでこんなところに…。」

「再起不能でしょ?
 それなら仕方ないんじゃない?」

 何それ…。

「どういうことですか?」

「え?千尋、知ってて言ってたんじゃないの?
 名前で呼ばないで『監督』って呼んでって言ってたじゃない。」

「それは…。」

「選手生命が絶たれて『澤村選手』って呼ばれたくないのは分かるよ~。
 だってまだ若いでしょ?
 これからどうするのかねぇ。」

 嘘…。
 そんなに大変な…。

 でも。再起不能ってことはないんじゃ。
 1人でやっていた時、すっごく上手だったし。

「千尋もネットで調べてみれば?
 有名な人だったからすぐに出てくるよ。」