目が覚めるとテーブルに突っ伏しているチビがいた。

 なんだ。帰らなかったのか。

 腹が減って、のそのそと立ち上がると携帯に連絡があったことに気づいた。

 しまった。大悟のこと忘れてたな。

 仕方なく電話をかけるとけたたましい声がした。

「なんだよ!出ろよ。携帯!
 居なくなったら心配するだろ?」

 別に大人だし。
 いいと思うんだけど。

 大悟に心配されて悪い気はしない。
 喜ばすのも癪だが、大悟が安心しそうなことを口にした。

「チビいる平気。」

 電話のやかましい大悟の声で起きたらしいチビが目をこすっている。

「は?なんだ。そうか。
 明日も来いよ。じゃーな。
 千尋ちゃんの前でまた寝るなよ。」

 もうすでに寝たというかブラックアウトしたけどな……。

 返事を期待してない大悟の電話は切れていた。

「あれ。のんちゃん起きてる。」

 おいおい。
 お前ものんちゃん呼ばわりかよ。

「澤村望夢。」

「うん。私、飯塚千尋。
 チビじゃなくて千尋だから。
 ね、のんちゃん。」

「……のんちゃん言うな。」

「あははっ。」

 ………こいつ嫌い。


「ねぇ。のぞむってどういう字?」

「……。」

「希望の望?」

「…それに夢。」

 別に教える義理はない。
 本当にこいつは俺のことを知らないらしい。

「夢を望むかぁ。かっこいい名前だね。」

「…夢は悪夢だった。」

「え?」

 しばらくの沈黙。

 その後にフフッって声がしてチビは笑っていた。
 こいつ変だと思う。

「悪夢だったなら良かったんじゃない?」

「は?」

「だって夢だったんでしょ?
 起きたらいいんだもん。」

 起きたら…ね。

 ニコニコしているチビを見て、やっぱりこいつ変だと思った。