『無邪気とは』というテストがあったら俺はこう書くと思う。

『こいつのことです。』

 チビが何故か隣にいた。
 どうやら大悟が何か言ったらしい。

「学校で迷子ってすごいよね。
 ま、トイレで迷子になるくらいだもんね。」

 相変わらず返事をしなくても勝手に話してくる。

「前の体育館で寝ちゃった時、大変だったんだよ。
 図体デカイから大悟先生と2人がかりで運んで。」

 はいはい。
 それはすみませんでしたね。

 いつも通りだ。
 思っていても声に出さない生活。

 そして………普通ならみんな俺の前から消えていくんだ。

 でもこいつはやっぱり変わってる。
 さっきからこの調子でずっと話している。

 返事、期待してないんだろうな。

「あんたって有名なバスケの選手だったんだって?」

 急に確信を突くようなことを他の世間話に混ぜて話されてチビの神経を疑う。

 その話題は心臓がつかまれて握りつぶされそうな痛みを感じた。

「すごいなぁ。そんだけ背があればなぁ。」

 ドクドクと波打つ心臓にチビは気付くわけもなく………。

「ねぇ。大丈夫?顔色また悪いよ?」

 ヒヤッとした手が頬に触れてハッとした。

「昔のことあんまりあんたに言っちゃダメって言われたんだけどさぁ。
 私、よく知らないから。」

 ヨクシラナイ………。