3、40分くらい経ったころ、砂利石を踏む音がした。
炎天下、私のほかにお参りの人はほぼいない。
そろそろ行こうと立ち上がると、狭い通路を男の人がふさいだ。

一瞬で危険ってわかった。踵を返して反対に走り出した。
でも、元が至近距離だったから、後ろから抱きつかれた。
嫌だ!!気持ち悪い!!
理不尽な行為に、恐怖より不満が湧き上がってくる。

私だって悪気でやったことじゃないんだよ。
中崎家の役に立てて、望も喜んで、もっと軽い好意ならよかったのに…!
気付かない鈍さが悪くても、無自覚じゃどうしようもないじゃん…。

こんなときに何なのっ!!

男の手が胸に来るのを感じて必死に防御する。力が強くて振りほどけない。
片手で拘束されて片手は腰から太腿を這う。
「寂しいんだったらなぐさめてやるよ」
安っぽい台詞に腹が立ち、隙を見せた自分を呪った。

これ以上、自分を嫌いになるわけにはいかないの!
死に物狂いで抵抗した。