悠未さんの記憶は、とても複雑で、どこまで覚えているのかも分からないし、忘れている範囲も定かではないらしい。

でも、確実に言えるのはカイくんのことは覚えていなくて、高校一年生になった同時にカイくんはお母さんに他人として『初めまして』からスタートし、たまに病院に行っては近状報告をしていたんだって。


「また、思い出してくれる日が来るといいね」

「……そうだな」


奇跡が起こるとするなら悠未さんの記憶が戻りますように。私にはただそう願うことしかできない。

私たちが出逢ったのは運命だったのかもしれない。

大切な人に“忘れられた人”
大切な人を“忘れなきゃいけない人”

お互いの境遇が、何かが、きっと私たちを近づけた。
私たちが出逢って恋をしたのはきっとかけがえのない奇跡なんだ。