自分を含め、子供の無鉄砲さというものを少し舐めていたかもしれない。と、ギルバートは嘆息した。
追っていたリリアンの背を見失って一時間が経っていた。
初めて歩く山道は背の高い雑草や滑る苔、足に絡みつく蔦などのせいで思うように足が進まず、ついにはリリアンとはぐれてしまった。
ひとりぼっちになったギルバートはリリアンを追うことに夢中で自分が今どこにいるのかを、完全に見失なってしまっていた。四方八方背の高い藪だらけで、どっちが道かも分からない。見えるのは、頭の上にある空だけだ。
リリアンの言う通り、あの場所にとどまっていた方が利口だったかも知れないと後悔する。
地の利は彼女の方がある。無謀に歩いているように見えて、リリアンはきっと道筋が分かっていたのだろう。しばらくしたらちゃんと戻ってきた可能性が大きい。
それなのに、つい夢中で追いかけてしまった自分はまだまだ子供だと、自省の溜息が零れた。
「あーあ。山で迷子だなんて、カッコ悪いにもほどがあるだろ……」
もしものときはリリアンを守るつもりで一緒に来たのに、はぐれたあげく迷子になるだなんて。ギルバートはやるせない思いでその場にしゃがみ込んだ。
ここからどうやって帰るかも問題だったが、リリアンがどうしているかも気にかかった。
ギルバートがいないことに気づいてすぐにロニーを呼びに行ってくれていればいいが、もしも自力でギルバートを探そうとしていたらやっかいなことになる。
下手をしたら二重遭難という最悪な結果になりかねない。
それだけは勘弁してくれと思いながら、ギルバートは持っていた鞄を漁った。



