「お前が良かったんだよ、バカ」 「…え?」 眠気も吹き飛んで、蓮の背中に乗せていた体重を離す。 ガシッと腕を掴まれて、どうやら逃げることは許されないらしい。 蓮のあの何でも見透かしてしまいそうな瞳が、あたしの姿を映し出す。 ―――キュッ… また、あの胸の痛みがあたしを襲った。 「ニャー」と、静かになった部屋に、アンの鳴き声が響いた。