「ほれみろ。言ってるそばから……キャパオーバーだな」


大きな胸板は、まさに男って感じで。

半分めくり上げられたシャツの袖からは骨ばっているけどたくましい腕が見えていて。

そんな腕で支えてもらえて。


なんだろう。

無性にホッとする……。


わたしには血の繋がった父の記憶がない。

なにをしていた人かもわからない。


義理の父のことは『お父さん』と呼びながらもどこか距離をおいてしまう。


もしも、父がいたら……

こんな風に優しく抱きしめてくれただろうか。


困ってるとき、

微笑んで話を聞いてくれただろうか。


辛口な母と違って、

娘の私には甘口なことを言ってくれただろうか。