「小さなことでいいんだよ。この範囲覚えたら自分をちょっと甘やかしてやろうとか。赤点回避できたらまぁオッケーくらいでのんびりしてみてもいいんじゃね?」

「でも……」

「人は、人。自分は自分」

「……!!」


それは――わたしが、いちばん欲しい言葉だった。


誰もいってくれなかった言葉……。


「あんなすげぇ兄ちゃんいたらハードルあがるかもしれないけど。お前、この時期からそんなに根詰めてたらいまに倒れ……」


先生の話を聞いている途中で、

視界が歪んだ。


ドサッと倒れ込んだ先は……


先生の、胸。


「……っ、すみません」


床めがけて倒れそうになったところを先生が咄嗟の判断で受け止めてくれた。