「来栖」
科学の授業のあと、実験室で、伊勢谷先生に手招かれた。
「珍しく、ぼーっとしてたな」
「あ……すみません」
「別に怒ってるんじゃねーよ? ただ、お前らしくないなと思って。どしたの?」
「ちょっと、寝不足で」
「追試の勉強か?」
「はい……」
「勉強しなきゃならないのはわかるけど、身体が資本だからな。ぶっ倒れるなよ?」
「…………」
「補習でなかったそうじゃん。兄ちゃんに教えてもらってるって話、聞いたけど」
「はい」
厳密にいえば、教えてもらってはいない。
いうならば、兄は、監督だ。
いや、教官だ。
それも――鬼教官だ。
わたしがサボらないか隣で見張り。
サボろうものなら罰を与えようとしてくる。
「で。なんとかなりそうか?」
「どうでしょう……」
わたし、バカだし。