「そう……ですか」

「案外この世の中にはお前が思ってる普通だとか常識を覆すようなこと、いっぱいあると思うよ」

「?」

「今は窮屈かもしれない。いろんなものに縛られて。だけどそれって逆に守られてることでもある。いつかお前が巣立ったときにどう生きてくか、決めるのはお前自身だ。だったら好きに生きてみれば」


どう生きていくかを決めるのは容易いことじゃない。

先生のいうとおり、わたしはまだまだ周りに甘えて生きている。


それはワガママをいうとかそんなんじゃなくて、たとえば住む家があり、毎日ご飯を食べ、あたたかいお風呂に入れたりといったことで。


もちろん親には子の扶養義務があるとか法律で決められているけれど、そんな当たり前だと思いがちなことも当たり前じゃなくて。


いつまでも続いてはくれない。

いずれ自分でやらなきゃいけない。

自分の人生を生きなければならない。


そこにわたしは、

兄がいてくれると嬉しい……。


「……先生は、応援してくれますか?」

「ここで俺が嫌っていったらやめんの?」

「!」

「やめられるの?」


やめたくない。

お兄ちゃんのこと、想っていたい……。


「やめたく、ないです」

「そんなもんだって、恋なんて。誰かに命令されたり認められてするものでもないだろ。よく言うじゃん。恋はするものでなく“おちる”ものだって」