*
戻ってきた伊勢谷先生からほんのりタバコの香りが漂ってきた。
それを気にしてなのか、さっきより少し離れたところに腰掛けると先生が口を開いた。
「いつから好きなの?」
「はいっ?」
「兄ちゃんのこと」
「……!? なっ、なんで……それ」
「その様子だとビンゴか」
「……!!?」
「わり。そうかなって思いながら確信なかったから、カマかけた」
試されたの!?
「……やっぱり、おかしいですかね」
「ん?」
「家族に恋しちゃうなんて」
「どうだろうなぁ。前例のない話ではないだろうし。結婚までする人も中にはいるんじゃないの?」
「そうなんですか?」
「いい目で見ない連中もいるだろうけどな。俺は、そういうのは気にならないかな」


