「さっきの子……あの子に似てるよね。ほら、あんたの初恋の」

「なんで美咲が俺の初恋の相手なんて覚えてんの」

「覚えてるよー。可愛い弟のことだもん」

「はいはい」

「あの子、元気にやってるかな」

「知るか。俺は顔すら覚えてねぇわ」


伊勢谷がタバコをふかす。


「心配すんな。相手は大事な生徒だ。取って食おうなんて思ってねーよ」

「だったら肩になんて手をまわすな」

「はは。違いねぇ」

「笑い事じゃ……」

「あいつ、俺なんだ」

「!」

「俺に……似てるんだ」

「えぇ。あの純情そうな女子高生が……あんたに?」

「汚れ物を見る目で俺を見んな」

「だってさぁ。あんた、今は落ち着いてるみたいだけど学生時代はコロコロ彼女代えるプレイボーイだったでしょ」

「……好きでしてたわけじゃねーよ」

「え?」

「ところで美咲はどうなの」

「なにが?」

「旦那と上手くいってる?」

「もちろん。二年目だけど新婚みたいにラブラブだよ」

「うーわ。いらねぇ、そんな情報」


「橘先生」


美咲が、医師から呼ばれる。


「あ……すぐ行きます。それじゃ、またね」

「ああ。またな」