「先生」

「ん?」

「わたしは、お兄ちゃんに、すごく……拒絶されてるんです」

「たとえば?」

「わたしに、お母さんと、暮らして欲しいみたいで」

「そう」

「……消えてって。そう言うんです」


すると先生は、ふっと笑った。


「ほんとにそんなこと願ってたら、気絶寸前でお前のことなんて考えるか?」

「……!」

「なにがあったかは俺にはわかんねーけど、お前らが仲いいのは周知の事実なんじゃないの?」

「先生から見てもお兄ちゃんとわたしは仲いいですか?」

「ああ」

「ほんとに?」

「ほんとだよ。それはもう……妬けるくらい」


――え?


「やけ……る?」

「俺、お前が思ってるほどいい大人でもないよ?」


先生……?


「どうする? あわよくば、この機会に俺が悪さしてやろうとか考えてたら」

「!」


先生の腕が、肩にまわってくる。


「悪さ、って……?」

「さぁ?」

「…………」


えっと。これは。

一体……!?


「ちょっとタバコ吸ってくる」


そういって、先生が立ち上がると歩いて行ってしまった。