これまで受け持ってくれた誰よりも、伊勢谷先生はわたしに親身になってくれる。

生徒に寄り添ってくれている。


「あのさ、来栖」

「はい……」

「あいつ、眠りにつく前なんていったと思う?」

「なにか、いったんですか?」

「“うららを先にうちに帰して下さい”」

「!」

「なんでかわかる?」

「わたしと一緒にいたく、ないから……」

「違うと思うな、俺は」

「?」

「うつしなくないんじゃない? 風邪」


――!!


「そんな……でも、」


わたしのために……

迷惑なんて嘘ついたの?


「それに、弱ってるとこ見せたくねーのかもよ。完璧がゆえに」


弱ってるとこ見せてよ。

いいよ。

完璧じゃなくても。

強がらなくても、いいんだよ?