『もしもし』


すがるおもいで電話して


3コール目で出てくれたのは、


「先生っ……」


――伊勢谷先生だった。


『その声は……来栖か? どうした』

「お兄ちゃんが」

『おお、調子どうだ』

「……ものすごく高熱で」

『病院は? 薬とかあんの?』

「やっぱりわたし、バカでした。薬は家にあるって思ってたのに、見つけられなくて。お母さんに電話しても繋がらなくて。お兄ちゃん元気にするどころか余計、お兄ちゃんのこと、苦しめて……」

『落ち着け、来栖』

「どうしよう、先生。お兄ちゃん死んじゃったら。40℃あるんです。救急車呼んじゃダメですか?」

『兄ちゃんぐったりしてるのか? 意識は?』

「苦しそうにしてますが……意識は、あります」

『水分は? とれてる?』

「さっきスポーツドリンク飲んでくれました。でも朝からご飯とか食べてないみたいで」

『そんな状態なら無理に食う必要ない。だけど水分はマメにとらせとけ』

「はいっ……でも、部屋に……」

『ん?』

「……入れてもらえない……入っちゃ、困らせて余計、辛くさせちゃう」

『わかった』

「え?」

『今から行く』

「せ……先生が?」

『なんとかしてやる。だから、お前はとりあえず落ち着け。いいな?』

「……はいっ」