ザアザアと煩(うるさ)い雨音にかき消されてしまいそうな声で、兄は続けた。


「手紙をもらったんだ」

「……手紙?」

「そう。雫さんから俺あてに書かれた手紙が、あの朝、起きたら机の上に置いてあった」


あの朝とは、母がいなくなった朝のことだろう。


「なにが書いてあったと思う?」

「なんだろう……」

「びっしり。便箋3枚分」

「……!!」


わたしには、たったひとことの置き手紙だったのに。


そんなところでも差をつけるんだ?


やっぱり、お母さん


わたしなんて……


落ちこぼれの、わたしなんてっ……


「顔をあげて」


そういわれ、顔をあげると

兄が

とても優しい顔してわたしを見つめていた。