いきなりどうしたの。

母がいなくなってから、母の話、まったくしなかったのに。


「雫さんとこ行きたい?」


たしかに母には会いたい。

でも、自ら姿を消した母に、なにを話していいかわからない。


母は留守にしてるだけで。

戻ってくるわけで。


だったらなにも、わたしから行かなくてもいいんじゃないかな。

ひょっとしたら、待つのも思いやりなのかもしれない。


連絡だけは絶えないようにしたい。


それに。


わたし、ここにいたい。


「わたしは……」

「俺、こうなる日が来ると思ってた。遅かれ早かれ」


こうなる日?


「まさか、うららを置いてくとは思わなかったけど」

「お兄ちゃん?」

「俺は……」

「……?」

「結局俺は、雫さんの息子にはなれなかった」