「……え……」

「このゴンドラは、みんなを乗せたゴンドラより一足先に着くんだ。だからそのまま俺たちが人混みに紛れれば二人きりになれるよ」

「そんなの……絶対ダメ」

「それはうららの本音じゃないよね?」

「せっかくみんなで来たのに」

「たまには人のこと考えるのやめてみたら」

「考えてるよ?」


兄の手はだんだん上にあがってくる。


「こんなのつけて。男にもらったの?」


ネックレスをチャラリといじられる。


「ま、まさか。自分で買ったんだよ?」

「……そう。そうだよね。うららが、他人からもらった首輪なんてつけないよね」

「首輪とか言わないで」

「男から女にネックレスを送るのってさぁ。『独り占めしたい』って深層心理の現れらしいよ?」

「へぇ……」

「欲しい?」

「えっ?」

「こういうの。俺からもらいたい?」

「!!」

「買ってあげようか。ここで売ってるんじゃない? こんなの外しちゃってさ。付け替えなよ」

「なんで……」

「うららのこと、たっぷり可愛がってあげる。だから俺と消えちゃお?」