それでも……


「うん」


この15分ほどの時を過ごすのが兄と一緒だということが、たまらなく嬉しい。


なんで。


どうして。


「お利口だね」

「……!!」


隣に座ると兄が優しく微笑んでくれた。


そんな顔を見て胸がドキドキする。


航太くんが隣にいて緊張していたあのドキドキとはまた違う……。


いま。

わたしが。


兄を、独占してる……。


「今日は俺にとって最悪の日だけど。最高の日でもあった」

「え……?」

「だってうららのあんな顔が見れたから」

「あんな……顔?」

「悲しそうな顔」


――!?


「俺はね、うらら。あいつにこう言ってやったんだ」

「?」

「“俺があの子と話すたびに俺のこと気にしてへこんでるうららが、もっと見たかった”」

「な……なに、それ」

「だってそうだろ? うらら、俺ばかり気にしてて。あの子と話せば話すほど、泣きそうだった」

「わかっていて……わたしを悲しませたくて……桜井さんと仲良くしたの?」

「それ以上に俺があの子と口を利く理由なんてないよ」