兄と航太くんの間にさっきピリピリした空気が流れたのが嘘みたいに、お互いなにもなかったかのように過ごしている。


よく普通にしていられるなぁ。

わたしはさっきの光景が頭から離れないのに……。


「あ! あれ乗ろ」


桜井さんが目をつけたのは、観覧車だ。

大きいとは聞いていたけれど、間近にみると迫力があった。


スピードがあるわけじゃない。

だけどそれが逆に怖い。


一体何分間あの箱の中に閉じ込められるのだろう。


「ビビってんの」


そういって、航太くんが頭をコツンとしてくる。


「……っ、」

「まさかこれも怖いとか言わないよな?」

「や……それは、」

「怖いの?」

「大丈夫……だもん」