「でも……」


「貸して、うらら」


――!?


ひょいと電話を取り上げられる。


「……もしもし」


かわっちゃった。兄に。

その拍子に兄の腕の中から逃げる。


『あ。……雅くん?』

「そうだよ」

『あたし、うららの友達の柏木架里奈です』

「うららがいつもお世話になってます」

『そんなかしこまらないで? 同級生なのに』

「うらら、なんだか困ってるみたいだったけど」

『雅くんのこと誘いたくて誘えないからだよ』

「……誘うって?」

『実はうららと今週末遊園地に行くことになってね、メンバーの相談してて』

「…………」

『あと一人探してるんだけど。雅くんどうかな』

「………」

『期日が迫ったチケット持っててさぁ。無駄にしちゃうの勿体無いでしょ?』

「……そう」

『あれ、乗り気じゃない?』

「あんまり得意じゃないんだ。人の多いとこは」

『雅くんが行けないならあたしが友達誘うことになってるの』

「そっか。それじゃあ、俺は……」

『男の子』

「……!」


架里奈になにか言われ、目を見開く兄。


『ダブルデートしちゃうけど。いい?』