「うらら、起きて来ないわねぇ」
いつもならとっくに顔を出している時間にうららの姿がないことに雫さんが疑問を抱くのも無理なかった。
「俺、見てきます」
「ありがとう、雅くん」
部屋に入ると、ベッドに横たわるうららに呼びかけた。
「少しはラクになった?」
「お兄ちゃん……」
真っ青な顔でチラリと俺を見上げるうらら。
ビクリと肩をふるわせて布団を深々とかぶっている。
その姿はまるで怯えた子犬のようだ。
——あれから俺は一睡も眠れなかった。
ずっとこの手でうららを抱きしめていたから。
俺たちは、一晩中、抱きしめ合って眠った。
うららのベッドで。


