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翌朝、澄ました顔して食卓に姿を現した父は、ぶっとんだサイコパスだと思う。
「おはようございます、父さん」
「おはよう雅」
ピシッとアイロンのあてられたカッターシャツを着て、タブレット端末でニュースを読みながらコーヒーをすすっていた。
職業――弁護士。
普段は人を助けておいて家族には傷を負わせる。
そんなやつが堂々とスーツの襟元に誇らしげにひまわりモチーフのバッジをつけているのだから世も末だ。
「おはよう、雅くん」
「おはようございます」
雫さんもまた役者だった。
けろっとした笑顔でいつも通り俺を出迎えてくる。
当時、小学生の娘がいるとは思えない美貌の持ち主で(いまだって綺麗な人だと思う)、そんなところを父は気に入っているのだろうか。
二人をみて、昨晩あんなことがあったと誰が想像できるだろうか。


