うららは、知っていた。

俺がケガしていることを。


風呂に一緒に入っていたから。


俺がうららにケガの本当の理由を話すことはなかった。

転んだとかぶつけたとごまかして、うららはそれを信じていた。


うららは『いたいのいたいのとんでけ』と俺の傷を撫でてきた。


そんな無駄なことをしてくるうららが。

脳天気なうららが。

やっぱり俺をイラつかせた。


だけど。


『とんでった……?』


なにも気づいていないバカなうららに。

心配そうに尋ねてくるうららに。


俺は……


自分でも気づかないくらい、少しずつ、

心を動かされていたのかもしれない。