「ゃあっ……」


物音と声が聞こえてきた。

父の寝室の方から。


不審に思った俺は、そっと寝室を覗き

声も出ないくらい驚いた。


中で父が……

父が、雫さんを、殴っていた。


雫さんは多分、あれでも声を殺していたと思う。

俺たちに聞かれないように。


「やめて……ください、」

「誰に食わせてもらってると思ってる?」


怯えたような目で父を見上げる雫さん。

そんな雫さんを怒りの表情を浮かべ見下ろす父。


見てはいけないものを、見た。


動揺した俺は、その場から去ろうとした。

すぐに離れたかった。


そこに。


「お兄ちゃん?」


……あろうことか、うららがやってきた。