正確にいえば、ぼんやりと残ってはいるのかもしれない。


だけどそれは果たして現実だったのか、もう確かめる術がない。


たとえばリアルな夢をみたとき、『今のは夢と現実のどちらだったのだろうか』と寝ぼけ眼で把握しきれないことが稀にあるけれど。


その感覚に似ている。


俺の中の母親像なんてそんなもんで、特別な思い出ひとつない。