「お兄ちゃん……?」


中にいるはずなのに、返事がない。

勝手に入って大丈夫だろうか。


返事する前に開けると怒られそう……。

兄はいつだって自由にわたしの部屋に出入りするが、わたしが同じことをすれば機嫌を損ねるに違いない。


そんな自己中な兄のことを今は愛おしいとさえ思っているわたしは、どうかしてしまったのだろうか。


「お兄ちゃん。入るよ?」


ガチャ……


もしかすれば眠っているかもしれないと思い、そっとドアノブを下げてドアを開けた。


――真っ暗……。


部屋の電気は豆球すら灯されていなくて、廊下の電気をたよりに中の様子を確認しなきゃなにも見えない状態だ。


兄は――ベッドに横たわっている。


背中を向けて、壁側を向いて眠っている。


薄暗い中、答案とプリントを兄の机の上に置いた。


……採点、よろしくお願いします。