彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

食べ終わってから何を思ったのか朔也は俺の家で飲みなおせばいいという。
しかも、昨日誕生日なんかじゃねーだろっていう嘘までついて。

今日の朝で分かったけど、家に彼女がいたら、お酒を飲んで少しウルッとした目をした彼女がそこにいたら。

……ムリだろ。

しかも俺も結構飲んでる。
手出ししないって決めて、それなのに。

朔也は無理やり了承させるとそのまま厨房に戻って行った。

憮然とした態度を取る俺に彼女がおろおろしだして今日のお礼どころか無理言って悪かったと謝罪までしてくる始末で。

だから、そうじゃない。
そんな遠慮なんていらない、むしろもっと……


「今ここにいるのは堂地主任じゃなく、堂地純哉です」


あぁ、とうとう言ってしまった。
堂地純哉として見て欲しいと。


ところが目の前の彼女は全く分からない様子できょとんとしていた。

「わからなければいい」とだけ言うと気付かれない様にため息をついた。


……そうだ、彼女はありえないぐらい鈍感だった。


そして何を思ったのか「朔也と話すように普通に話してほしい」という彼女。
その話は急にどこからわいてきた?全くつながりが見えない俺はきっと眉間にしわを寄せていたはず。

だけど、きっと理由があるはずだ。
彼女の願いはすべて叶えてあげたい。

だからその条件を飲むと言うと、今度は遠慮がちに無理ならいいと言いそうな彼女の言葉をさえぎって、


「だから……さっき気を使いすぎだって言ったの聞いてなかった?」


そう言ってやると驚いた顔。
もういいか、どうせもうすぐ主任じゃなくなるんだし。
主任って呼ばれなきゃ、こんな話し方しなくてもいいわけだし。

結局俺の家にこれなくなった朔也。
今回ばかりは本当におせっかいすぎ。

彼女をそのまま家に送っていく途中。
やっぱり彼女を感じたくてその手を取りポケットに一緒に入れる。

何度となく繋いだ手。

この手を放したくないのに。
もっとそばに置いておきたいのに。

だけど、残された時間はどんどん少なくなっていく。