彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

本当にこれで最後だ。
彼女と約束した水族館に行くその日。

結局いつもと同じように落ちつかずに早めに出た家。
約束より早い時間だから迷惑なのはわかっている。

それでも……

早く着いてしまった俺に一緒にコーヒーをどうかと言う彼女の申し出に、喜んで頷き部屋に入った。

初めて入る彼女の部屋。
彼女らしいクリーム色の室内。かわいらしい雑貨、そしてそこでいつもしているであろうPC。
女の子の部屋にあるには少し違和感を感じるデスクトップのパソコン。
ゲームをするためにハイスペックのものを選ぶとこうなる。

それには気づかないふりをして淹れてもらったコーヒーを飲む。

彼女の部屋は初めて入るというのに、居心地の良さにすっかり今日ここにきた趣旨を忘れそうになっていた。

まるで恋人同士のようなこの時間にうっかり手出ししそうになる。
ここにいたら、このままじゃ済まない。
……朝から何考えてんだ、俺。


水族館に着くと、『迷子防止』なんていつものセリフを言って彼女の手を取った。
水槽を泳ぐ魚を見ておいしそうという彼女に、やっぱり少し意地悪を言ってみたくなる。

彼女はそれは楽しそうに館内を見ていた。
そんな彼女がかわいくて、でももうすぐ見られなくなる現実にため息をついた。

そのあと彼女が急に元気がなくなったのは疲れてしまったからだと思った。
それでもさっきまで楽しんでくれていたし、今日の記念に彼女に気づかれないようにペイパーウエイトを買った。
彼女がおいしそうと言ったイワシのペーパーウエイトを。

これなら、俺のいなくなった後も仕事で使ってくれそうだと思ったから。
そしてそれを見たときに少しでも俺の事を思い出してくれたら。

忘れて欲しいと思っていながら
想い出してほしいなんて
矛盾してる。

結局忘れられないのは、……本当は俺のほう。