彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

午前中、道路の混雑もなく予定通りに休憩ポイントについた。
ここでお昼休憩をするらしい。
昨日に引き続き今日も本当にいいお天気で、車の中は少し暑いぐらいだった。


「向こうは公園になっているので、そこでご飯にしましょう」


主任はそう言うと、後部座席から朔也さんの作ってくれたお弁当の紙袋を持ちだした。
そして私の方に回ってくると、左手を出し……?
また、迷子防止ですか?


「モモ、」


だから、そんな呼び方ってズルいです。
だってそう呼ぶときの主任の声は優しくて、まるで愛しいものでも呼ぶかのように甘いから。
……勘違いしてしまいそうになる。


「そんなに迷子になりたいんですか?」


ほら、いつだってそう。
その手はただの迷子防止。
それ以外の意味はない。

こんなに近くにいるのに心の距離はこんなにも遠い。
それが悲しくて、今の顔を主任に見られたくなくて慌てて私は、


「あの、飲み物、買ってきますね?」


うつむいたまま自動販売機の方にくるりと向きなおり歩きだそうとした瞬間、

――――その右手首を主任にとらえられた。


「そんなにっ、私のすること。主任は心配ですか?」


いつの間にか私の口からそんな言葉が出ていた。
だってただの迷子防止なんていらない。
私が欲しいのはもっと……


「いつになったらその主任から解放してくれるんですか?まぁそれはあとでゆっくり問い詰めますが。」


主任から解放?
問い詰める?

主任は私の言ったことに対して何一つ答えてくれていない。それどころかワケわからないことまで言ってる。
それから主任は掴んでいた手首を放し、手のひらをきゅっと繋ぎなおすと、


「モモの事が心配ですよ。いえ、モモだから心配なんです。わかりますか?」


いいえ、まったく。
これっぽっちも。
主任の言ってる事なんて、わかりま……

『アイツが心配するから』

さっき朔也さんもそう言っていた。けど、

主任が?
私を?
なんで?


「全く分からないって顔してますね。それではそれはゆっくり座ってから話しましょう。とりあえず、飲み物買いに行きますよ?」

「…は、い」


その手を繋がれたまま自動販売機の前までくるとそっと手を放され、
「ミルクティでいいですよね?」と言って私の分と自分のコーヒーを買い紙袋に入れるとまた手を繋がれた。