彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

さっきよりもさらに早まる心臓。
ジュンさんと呼ぶだけでもかなりの緊張なのに、主任のその眼差しにめまいまでおこしそうで。
でも、ちゃんと今日どこに行くか聞かなくちゃ。


「あのっ、主任?」

「……」


呼びかけには全く答えてくれなくて、恐る恐る主任を見れば、眉間にしわさえよせてる。

あ、まさか主任って呼んだから?

だって、そんな急に主任をジュンさんと呼ぶなんて簡単なことじゃない、のに。
でも返事をしてくれないと話が進まないので、頑張って言い直す。


「あの……ジュン、さん?」

「ん。」


今度は返事してくれた。
口角を少し上げ目を細めて優しい眼差しをこちらに向けて。
私が主任って呼んだら、どうやら返事をしてくれるつもりはないらしい。
それって何の罰ゲームですか?


「あの、今日って…どちらに?」


主任を見上げたまま、今度こそちゃんと聞いてみたけど主任から帰ってきた言葉は。


「夕陽を見に。」

「夕陽?って、」


場所じゃなくて、夕陽。って、あの夕陽?
太陽が沈むあれ?
でもわざわざ夕陽を見るって言うからには……


「約束しましたから。…忘れましたか?」


忘れるわけない。
だって今度行きましょうって主任が言ってくれた。
そんなことないと思うけど、その約束のために帰ってきた、とか?

まさかね、ないない。

だって主任は、私に告白さえさせてくれなかった。
だけど真面目な主任は、約束だけは果たそうとしてくれてる。
貴重なお休みのはずなのに。


「いえ、でも、しゅに……、」


主任と言おうとして鋭い視線で刺され言葉が止まる。


「でも……ジュン、さんはお休みは――――」
「休みは明日まで、だから問題ないです」


そっか、お休みは私と一緒なんだ。
同じ会社とはいえ、本社だから休みが多少ちがったりするかと思ったけど。

あ、でも。
だったら車のキーを取りに行かないと、


「あ、じゃあ車――――」
「車は朔也に借りました。お昼も朔也に頼んであるから取りに行くだけです」


他に何かありますか?って畳み込むように言う主任。

用意周到っていうか、
主任が完璧すぎて何も言えなくなる。