彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

眠れなかった……
目をきつく閉じて寝ることに集中しようとするたびに主任の顔が浮かんできた。

会えなくなって一カ月。

会いたかったその人が目の前に。
いや、隣にいてしかも手を繋いでいたなんて。
しかもその人がギルドのオフ会に突然現れたんだから驚かないわけがない。
そんな状態のまま眠れない夜を過ごしてしまうのなんて当たり前じゃないんだろうか。

誰にしているのわからない言い訳に苦笑してベットから体を起こす。


時刻は六時。
待ち合わせまでは十分時間がある。

こうなったら、お風呂にお湯をためてゆっくり入ろう。
ほぼ眠れていない状態だから、せめてお風呂でリラックスできたら少しは違うだろうと考えた。



ポチャン――


「ふぅー、気持ちい…」


お気に入りのバスオイルを入れ、温めのお湯で半身浴。

目を閉じて、浮かんでくるのは主任の声


「モモ、」


ゲーム内でジュンさんは私の事をそう呼んでいた。最初から。
「フトモモ天使」なのに、なんで「モモ」?ってちょっと思った。
でも普段から桃ちゃんと呼ばれていたからすぐにそんな疑問は忘れ、そう呼ばれることを受け入れていた。

まさかあの時から知ってたの?

いや、でも誰にもゲームしてることなんて言ってないし。
あの時の私はスーラさんと知り合ったばかりで、プライベートなことはもちろん会社の事も話していない。
会社の事を話すようになったのは、もっと……

ギルドに入って雪姫さんたちと仲良くなって、それからちょっとずつ仕事の事も話すようになった気がする。
でもスーラさんとジュンさんとはほとんどプライベートの話をすることはなかった。
だから考えてみてもわからなかった。

いつ私だと思い始めたのか。
いつ私だと確信したのか。

そしてなぜそれを私に教えてくれなかったのか。

いつの間にかぬるくなっていたお湯から出て、じんわりと出てきた汗をシャワーで流すと浴室を出た。