彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

電車を降りて改札を出るとそのままタクシー乗り場へと向かう主任。
私の家は駅から十分弱だからタクシーに乗るほどでもないし、どうしていいかわからずに立ち止まる。
それに気づいた主任が振り返り、


「どうしました?」

「あの、」

「早く、帰りますよ?」


そして普段と変わらない表情のまま、主任の左手が伸ばされた。

帰る?
どこに?

私が動かないままでいると、少し困った顔の主任がこちらに寄ってきて、


「……モモ」


ずるいです、主任。

そんな優しい声で
そんな風に呼ぶだなんて


「疲れているんですから、早く帰りますよ」

「……はい」


優しく言われて、ついそのまま返事をしてしまう私。
条件反射って怖い。

そしてまた繋がれた手に
なぜかホッとして

大人しく隣を歩きタクシー乗り場へ。


すぐに順番が回ってきてなぜか私が先に乗せられて主任がすらすらとうちまでの道のりを運転手に言っていた。
歩いても十分かからない距離は、タクシーでもそう変わらなくてすぐに着いてしまった。
運転手さんにすぐ戻るからここで待っているように伝えた主任は先に降りて、私が降りるのを待っている。
タクシーを降りた私の手をすぐに捕まえるとそのままアパートの階段に向かって歩く主任。

もうすぐ家に着いちゃうのに。
タクシーも待たせてるのに。
何も話してくれない主任。

階段を登り切り家のドアの前まで来ると、


「明日十時に迎えに来ます」

「え?明日?ですか?」

「なにか?」

「いえ、あの。はい」

「では、今日はゆっくりと休んでください。おやすみなさい」

「主任、ありがとうございまし…た」


送ってくれたお礼だけでもとあわてて頭を下げた私に、


「……主任、ねぇ」


聞き間違い?
なんとも主任らしからぬ発言があったような?
確認しようと頭を上げた時にはもうすでに主任は階段を下りていた。