二度言われて、やっと言葉の意味が呑みこめた。康子は「呪い」と言ったのだった。わかると同時に、沙樹はあきれてしまった。

「は? 呪い? 九ケ沼さん、何言ってるの?」

笑いとばそうとしたが、康子はまじめな顔を崩さなかった。

「そう、呪い。ねえ、二宮さん、自分の部屋とか、おうちとかで、変な文字を書いたお札を見ませんでしたか? あるいは……たとえば、人の形に切り抜いた紙とか、藁で作った人形とか……」

「よしてよ。何が呪いよ。ばかばかしい」

仲良し三人組の中では、真由がこういうのを信じるほうだが、沙樹はまったく興味がなかった。普通の女の子がハマる占いだって、話題につきあいはするが、信じてはいない。

康子がなおも続ける。

「ばかばかしいと思うかもしれないけど、でも、もし何か変なものを見つけたら――」

「もういい。やめて」

それ以上康子の話を聞くつもりはなかった。

康子があわれなものでも見るように沙樹を見つめている。

しばしの沈黙があった。

沙樹は、自分でも外面はいいほうだと思っている。こんなときでも、最小限の礼だけはつくしておこうと思った。

「その……いろんな考えがあるとは思うけど、あたし、そういうのは信じないほうなの。体調が悪いのは……ちょっとストレスがたまって寝付かれないせい。呪いとか、そういうんじゃない。でも、まあ、心配してくれてありがとう。話はそれだけ?」

さあ、これで終わりよ、とばかりに話を打ち切ろうとした。