――三日後……


仕事が終わる少し前、環ちゃんと輝樹君がギャラリーに来てくれた。


まだ輝樹君に引っ越しのお礼をしてなかったので、ふたりを食事に誘って銀座にしてはコスパのいいしゃぶしゃぶ専門店に来たが、私はイマイチ食欲がない。


あれから無事売買契約が交わされ、裸婦画の所有者となった婦人は感激していたけど、私が残金の百万円を払うことになったと知ると恐縮しまくり、百万円は零士先生が提示した支払期限までに必ず返済すると言っていた。


二百万が精一杯だと言っていた婦人がどうやって返済するんだろうと不思議に思っていたら、どうやら会社を経営している甥っ子がいるらしく、その甥っ子に頼んでみると……


でも、その甥っ子とは些細なことで喧嘩をして以来、もう何十年も連絡を取っておらず疎遠になっているそうで、そんな事情だから資金援助を頼みづらかったのだけれど、赤の他人の私に迷惑を掛けるワケにはいかないのでお願いしてみると何度も頭を下げていた。


だが、あれから三日経つがまだ連絡はない。ということは、きっとダメだったんだろう……


とんだ借金を背負うことになってしまったが、あの時の私はどうしても婦人の喜ぶ顔が見たかった。


もう二度と会うことが叶わない愛しい人との思い出の絵なんだもの。何がなんでも婦人以外の人が裸婦画を入手するのだけは阻止したかった。けれど、気掛かりだったのは零士先生のあの言葉。


零士先生は具体的なことは何も言ってなかったが、体で返せってことは……そういうことだよね。