到着したのは、銀座から程近いスタイリッシュな高層ビル。パーティーが行われるのは結婚披露宴でも使われているという最上階の大きな会場。


エレベーターを降りるとホールには西島先生の功績を祝う色とりどりの豪華な花が溢れ、お祝いムード一色だ。


そして緊張気味に受付を済ませ入った会場の壁には、西島先生の代表作が展示されていて、紳士淑女がそれらを眺め和やかに談笑していた。


もうこの時点で場違い感がハンパない。一応、出席したんだし、これで義理は果たせた。西島先生に挨拶をしたら早々に退散しよう。


そんなことを考えつつ西島先生の姿を探していたら、とんでもない人物を見つけてしまったんだ。


えっ……まさか……


でもそれは、間違いなく新太さんで、横に居る年配の男性と楽しげに笑顔で話しをしている。暫くの間、彼の笑顔を複雑な気持ちで眺めていたのだけど、ふと、ある思いが頭を掠めた。


私がショックを受けて落ち込んでいる間も彼はあんな風に笑っていたの? 騙していたという後ろめたさや罪悪感はなかったの?


彼の気持ちを確かめたくて夢中で人をかき分け新太さんの元に駆け寄ると、私を目の前にした彼が驚きの表情を見せる。


「えっ? 希穂? なんで君がここに居るんだ?」


だが、私は新太さんの質問には答えず「私に何か言うことはないの?」と早口で迫ったのだけど、彼の反応は想像以上に冷たかった。


「希穂に言うこと? 別に……バレちまったのならしょうがないしな。まぁ、そういうことだ」