――個展初日が無事終わり、薫さん達を含むスタッフの皆と食事を終えた私は零士先生のマンションに来ていた。


食事が終わると他の人達は二次会へと繰り出したが、私と零士先生は誘われず、早く帰れと言わんばかりに置いてけぼりにされたんだ。仕方なく帰ってきたのだけれど、それは私達をふたりっきりにしてあげたいという皆の優しさだったのだと思う。


実はあの後、もうひとつ、衝撃的な事実が判明していた。


私のガイドの仕事が途切れ、一段落したのを見計らって現れたのは、環ちゃんと輝樹君。真剣な顔で大事な話しがあると言うので、何事かと思ったら……


「私達、付き合っているの」と告白され、目が点になる。


まさかこのふたりが……と驚いたけど、よく見たら凄くお似合いで、環ちゃんが輝樹君の服の裾をずっと掴んでいた姿がとっても可愛くて印象的だった。


皆幸せになっていくんだな……少し前までは羨ましいと思っていたけど、自分もその中のひとりになれたんだ。


「希穂も飲むだろ?」


ワインセラーの中を覗き込み、ワインを選んでいる零士先生の後ろ姿を見つめながら、またここに戻って来れた喜びを噛締める。が、それも長くは続かない。零士先生はまた私を残し、パリに行ってしまうんだもの。


複雑な気持ちで冷蔵庫からチーズとサラミを取り出し、彼に気付かれないように小さなため息を付く。