零士先生は、輝樹君が本気で私のことを大切に思っているということが分かり、自分も本気で向き合わなければと思ったそうだ。
「話しをしているうちに、希穂を思う気持ちが愛情ではなく、純粋な友情だと気付いてホッとしたよ。希穂とアイツは、俺と薫みたいに性別を超えた親友……そうなんだろ?」
「えっ……」
逆にそうだったの?って私が聞きたい。
自惚れとかじゃなく、輝樹君の言葉の端々から見え隠れする優しさは、私への愛情なのでは……と思ったりしていた。
私は大きな勘違いをしていってこと? なんか、めっちゃ恥ずかしいんだけど……
微妙な笑顔で「ハハッ……」と笑うと零士先生が思いもよらぬことを言う。
「希穂がアイツに話したこと、全部聞いたよ」
「ええっ! 輝樹君、喋っちゃったの?」
「アイツを責めるな。俺が無理やり白状させたんだ。しかし……よくあれだけ誤解できたのもだな。それほどの妄想力があるなら、小説家になれるんじゃないか? ただし、奇想天外な小説専門だがな」
「もう! からかわないで……」
でも、まさかあの輝樹君が零士先生に全て話していたとは……じゃあ、会社の喫煙室で会った時にはもう、零士先生は私が勘違いしているって知ってたの?
退職願を素直に受け取ったのも、追い打ちを掛けるようにすぐ社宅を出ろと言ったのも、勘違いしている私がどんな反応するか確かめる為?
なんちゅー意地悪な人。そう思ったが……「俺がそんな心の狭い男に見えるか?」と激怒されてしまった。なのに「約束通り社宅は出てもらう」って言うからワケが分からない。



