でも、身近に居たミニ豚ちゃんが頭に浮かんだとしても、男の零士先生がどうしてArielなんて女性みたいな名前にしたんだろう?
その疑問に零士先生は不思議そうな顔で答える。
「そもそも、Arielは女性だけの名前じゃない。海外ではArielって名前の男は普通に居るからな。希穂が勝手に女だと決めつけていただけだろ?」
「あ……」
そう言われれば、そうだ。誰に言われたワケじゃなく、私が勝手にそう思い込んでいただけ。
「ちなみに、ミニ豚のArielは雄だ」
「そ、そうなんですか……」
そんな情報を教えられても……と顔を引きつらせ「ハハ……」と笑った時だった。Arielが来ないことに不満を持った来館者の対応に限界を感じた司会の課長が零士先生に泣きついてきた。
「常務、なんとかしてください。本当にArielは来ないのですか?」
「分かった。俺が説明する」
今度は来館者が零士先生の元に殺到し、私はその弾みで突き飛ばされ、揉みくちゃにされる零士先生を遠巻きに見つめるしかなかった。すると隣に居た薫さんが大きなため息を付く。
薫さんも零士先生がArielということは昨日まで知らなかったそうで、事実を知った時は仰天したと苦笑いを浮かべる。
「零士先生、薫さんも黙っていたんですね」
「ええ、こんなに近くに居て、零士のことならなんでも知ってると思っていたのに……なんかショックだわ」
薫さんが寂しそうに呟くと背後から「薫のことを思って言えなかったんだよ」という声がした。振り向いた先に居たのは、桔平さんと妹の愛花さん。



