「輝樹君、本当に有難う。また明日から頑張れそうだよ」
感謝の言葉を口にすると輝樹君が『明日からArielの個展が始まるね』と声を弾ませる。
『実はね、明日、環ちゃんとArielの個展を観に行く約束してるんだよ』
「えっ、ホント? 来てくれるの?」
実のところ、輝樹君は零士先生とあんなことがあったから、Arielの個展に顔を出し辛いのではと心配していたんだ。
「じゃあ、来る時間が分かったら電話して」
『あ、行く時間はもう決まってるよ。個展が始まる前にプレオープンがあって、そこでArielの新作が発表されるんでしょ? その時間に合わせて行こうと思って』
いやいや、それは無理だよ。プレオープンに参加できるのは、個展の関係者だけだもの。
気の毒に思いつつそのことを伝えると、なんと、環ちゃんが薫さんに掛け合いプレオープンに参加できることなったと。
「薫さんのコネか……でも、零士先生も居るんだよ。平気なの?」
しかし輝樹君に気にする様子は全くなく『今からワクワクだよ』なんて言ってる。
『あ、それと、希穂ちゃにはもう関係のないことだけど、一応、伝えておくね。新太先輩が結婚したよ』
新太さんは、例のスポンサーの娘と先週の日曜にニューヨークで式を挙げたそうだ。
「そう、良かったんじゃない」
新太さんには酷いことをされて恨んだこともあったけど、今は新太さんも幸せになって欲しいと思っている。
「今度、新太さんから連絡があったら、私がおめでとうって言ってたって伝えてくれる?」
皆、幸せになっていくんだね。嬉しいことだけど、ちょっぴり羨ましいな……



