どこまでも優しい輝樹君。その優しさに胸が熱くなり、沈んでいた気持ちがやっと上向きになった。その後も輝樹君は零士先生の話題には触れず、明るい話題で笑わせてくれる。


輝樹君と話せて良かった。


フッと微笑んで視線を落とした時、さっき放り投げた雑誌の占いのページが視界に入り、私の目は"人生最高の出来事もあり"という文字に釘付けになった。


すると輝樹君が『僕が付いてるから』なんて言うから、心がザワつく。


もしかして……


慌てて雑誌を手繰り寄せ、もう一度、占いを読み返してみる。


ここに書いてある"人生最悪なこと"というのは、零士先生とのことで、"最高の出来事"というのは……輝樹君のことなんじゃあ……


ついさっきまで信用できないと扱き下ろしていた占いを、舌の根も乾かぬうちに信じている自分に呆れてしまう。


でも、この占い通り"迷わず掴め"というのが輝樹の手だったとしても、きっと私はその手を掴むことできないだろうな。


どんなに辛くても、零士先生を忘れることはできない。十年経っても忘れられなかったんだもの。あの詐欺師の婦人のように、この先も私は初恋の彼を愛していくのだと思う。零士先生の幸せを願いながら……


だったらこんなクヨクヨしてちゃいけないよね。零士先生を祝福してあげなくっちゃ。


そう思った瞬間、胸に刺さっていた未練という名の棘がポロリと取れたような……そんな気がした。