――その日の夜……自宅マンション。


夕食後、もう一度、個展の資料を読み返しておこうと鞄に手を突っ込んだのだけど、掴んだ資料を再び鞄に戻し「はぁー……っ」と、とてつもなく大きなため息を付く。


なんだか凄く虚しい……明日、あんなに憧れていたArielに会えるというのに、全くテンションが上がらない。


気付けば零士先生のことばかり考えていて、大切な個展のことに集中できずにいた。


「あ~もう! 希穂、しっかりしろ!」


自分を叱咤激励し、両手で頬をパチパチ叩くと気分を変えようとローテーブルの上にあった読みかけの美術雑誌を手に取る。


なんでもいい。とにかく他のことを考えて頭の中から零士先生を消し去りたい。


意味もなく雑誌をペラペラ捲っていたら、占いのページが目に留まった。元々占いの類に興味はなく、いつも読み飛ばしていたが、なんでだろう。今日は自分の星座を探していた。


牡羊座……人生最悪の一週間。しかし人生最高の出来事もあり。差し出された手は迷わず掴め。


なにこれ? 最悪と最高? どっちかは当たるでしょ? いい加減だなぁ……だから占いは信用できないんだよ。


「占いなんかに頼るなんて、私、相当弱ってるな……」


雑誌を放り投げ自嘲した時だった。輝樹君から電話が掛かってきたんだ。


『希穂ちゃん、その後、どう? 元気にしてる?』


全然元気じゃないけど、輝樹君に心配掛けたくなかったから明るく声を弾ませる。


「元気だよ」

『そう、良かった。何かあったら僕を頼って。力になるから』