「高城千咲!」


篠宮くんと話をつけ、教室に戻ろうとすると、今度は厄介な人に遭遇した。


「鮫島杏奈」


フルネームで呼び捨てにされたから、自分も彼女をそう呼ぶ。


「今の一体何?環がアンタの勉強を見るってどういうこと?!」


どうやら一部始終を見ていたらしく、納得のいかない様子で突っかかって来る。


「覗き見なんて悪趣味だね」


そう言うと、彼女はカッとなった。


「偶然通りかかっただけよ」


“偶然”を強調し、彼女は眉間にしわを寄せる。


「私に内緒で二人コソコソと!」

「何で環と会うのに、いちいちアンタの許可を取らなくちゃいけないの。アンタの物じゃないのに」

「……っ、煩いわね!」


甲高い声をあげながら、彼女がさらに不機嫌になる。


「むしろ関係ないのはそっちじゃないの?環に聞かなかったわけ?うちらがキスしたこと」


そう言うと、悔しそうに唇を噛んだ。