「はあ……」


重い足取りで教室に向かいながら、階段のつきあたりを曲がろうとした時だった。


――――ドン!


俯きながら歩いていた為、前がちゃんと見えていなかった私は人にぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさ……」


謝ろうとして頭をあげると、そこに立っていたのは篠宮くんだった。


顔を見た瞬間、ドキッと心臓が波打った。


どうしてこういう時に、遭遇してしまうのだろうか。


「俯きながら歩くのは危ない」


冷静な口調でそう言うと、そそくさと横を通り過ぎようとする。


まるで、私とはもう関わりたくないみたいな様子だ。


「篠宮環」


私が名前を呼ぶと篠宮くんは立ち止まり、

「何?」

と振り返った。


「あ、えっと……」


無意識からの行動で、別に呼び止めるつもりなどなかったのに、何してるんだろう。