ぼくは、がおがおざうるす。
 ぼくは、いつもはらへり。
 はらぺこざうるす。
 ぼくがすきなものは。
 わるいこ。
 わるいこのわるいこころをたべて。
 いいこにするのがすき。

 ぼくにわるいこころをたべられたにんげんは。
 どんなごくあくにんもいいひとにかわる。

 でも、なんでだろう?
 でも、なんでだろう?

 ぼくにわるいこころをたべられたにんげんは。
 みんなじぶんでじぶんのことをころしちゃうんだ。
 かなしいけど。
 つらい。
 かなしいけど。
 とうとい。

 ぼくがわるいこことをたべないと。
 そのごくあくにんは、もっとたくさんのひとをきずつける。
 でも、ぼくがごくあくにんのこころをたべると。
 ごくあくにんがいのちをおとす。

 どっちがせいかい?
 どっちがただしい?

 どっちのいのちもだいじ。
 どっちのいのちもとうとい。

 ぼくはざうるす。
 ぼくはがおがおざうるす。

 いつもはらへり。

 ぼくがこころをたべるのは、ほんとうにくるしめるひとが「くるしい!」ってさけんだときのみ。

 だから、ぼくはこころをいっぱいたべない。
 だから、ぼくはおなかいっぱいにならない。
 たべなくてもしなない。
 でも、おなかはすく。

 だけどね。
 ぼくは、おもったんだ。
 ぼくが、ひもじいおもいをするのをぐっとこらえる。

 そしたら、だれもきずつかない。
 そしたら、だれもくるしまない。
 そしたら、だれもしなない。

 ぼくは、がおがお。
 ぼくは、がおがお。
 ぼくは、がおがおざうるす。

 がおーっとあらわれて。
 がおーっとたべる。

 たったそれだけでぼくのおなかはみたされる。
 でも、そのまんぞくはぼくだけのもの。
 だれかがきずつく。

 ぼくがうまれたのはだれのため?
 ぼくがくるしむのはだれのため?
 ぼくのせいできずつくのはだれ?

 こたえはふかい。
 こたえはふかい。
 こたえはふかいやみのなか。

 ぼくはせいぎかんでなにもおこなわない。
 そのせいぎはきっとぼくだけのもの。

 だからくるしいっておおきなこえでさけんでほしい。
 だからくるしいときは、おおきなこえでたすけをもとめてみて。
 きっとだれかがたすけてくれる。
 だってかれらはにんげんなのだから。
 でもね、だすけてくれないひとしかいないときもあるだろう。
 そんなとき、さけんでみてほしい。
 そんなとき、そっとつぶやいてみてほしい。

 そのときは。
 そのときは。
 そのときは。
 ぼくがそのわるいこのこころをたべにいく。
 そしたらにこにこ。
 みんなにこにこ。

 ぼくは、がおがおざうるす。
 ぼくは、はらぺこざうるす。

 ぼくがすきなのは、わるいこのこころ。
 がおがおざうるすは、わるいこがおすき。